『推し活』の捉え方 ~ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト編~
山口倫生氏
(主婦と生活社・デジタル推進室 室長)
推し活のトレンド
「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」は、1988年から開催し、今年が35回目となります。毎年1万5千人の応募者の中から、11月にグランプリを決めており、これまでの累計参加者数は40万を超えています。開催以来、様々なメディアを介して推し活を展開してきました。当初はマスメディアを介し、2010年ころから、WebやSNSにシフトし始め、現在ではリアルタイム性をともなったライブコミュニケーションへとシフトしています。さらに今後は、メタバースやWeb3(ブロックチェーンを統合したインターネット)、NFT(偽造不可な証明付きデジタルデータ)などにシフトしていくかもしれません。
コンテストにおけるLIVEの活用例としては、ライブ配信アプリ「SHOWROOM」でライブ配信を実施し、候補者の配信に対してファンがコメントしたり、ギフティングするなど、イベント中に獲得したポイント数に応じて選出していきます。LIVE×選考イベントでは、一月当たりの課金ユニーク数が数千人、平均単価が1万円弱、トータルで1億円を超えるエンゲージメントが生まれています。これまでの傾向として、LIVE視聴者数は増加傾向にあるなど、推し活コミュニケーションの場はLIVEにシフトしています。
推し活タッチポイント
「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の推し活タッチポイントには、デジタルでは、(1)SNS(2)『JUNON TV』アプリ(3)「SHOWROOM」、リアルでは、(4)本誌(5)学校・職場(6)コンテストイベントがあります。デジタルとリアルを組み合わせた約一年間の各選考イベントを通じて、応援や課金などのエンゲージメントが高まっていく推し活サイクルがコンテストの特長といえます。また、推し活を生み出すキーとして、タッチポイント全体で、日々推しを想い続けることができる至福時間を創出することが重要になります。
コンテストでは、SNSの短尺動画やアプリの体験時間、リアルタイムでのライブ配信などタッチポイント全体を活用した推し活サイクルから、至福時間を創出できることが最たる特長です。その中で、今最も注目しているのはTikTokです。昨年、『JUNON』の公式TikTokを立ち上げ、コンテストイベントにおけるZ世代の新しい発見ルートとして活用しています。昨年10月のファイナリスト自己紹介動画での再生合計時間は1673時間、リーチ視聴者数は90万人を超える一方で、ファンからの創作投稿も発生するなど、新たな推し活プラットフォームとしても注目しています。
「推す私」と「推し」との関係性
Twitter公式アカウントのアンケートによると、「推す私」の動機で最も多いのが、日々の充実や満足です。推しのコンテンツを日々閲覧し、コンテストイベントではライブ視聴に没頭するなど、SNSへの投稿やコンテンツ課金といった能動的なアクションが生まれています。その一方で、私の「推し」は、日々の努力や成長を通じて夢を叶えたいという動機を持っています。推し自身の葛藤や挑戦を日々配信することで、応援してもらえることへの大切さを実感しながら、配信中の推す私への感謝や返信を通じ、認知を深めています。自己アイデンティティ化する『推し活』においては、「推す私」と「推し」との関係性が、生きる動機そのものであり、「推す私」と「推し」の間で至福な関係性を続けることが推し活企画活用の肝となります。
至福な関係性を築く要素
「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」は、「推す私」と「推し」との至福な関係性を築くための競争性、物語性、誠実性、挑戦的、参加型、相互性という6つの企画要素に、「推す私」が共感・共創することによって推し活を生み出してきました。この仕組みをマーケティングに活用する際の重要なキーとして、コンテストのスケジュールがあります。コンテストの過程は、応募からファイナリストとして芸能事務所に所属するまでに、10回のタイミングがあります。この選考過程に合わせたタッチポイントの組み合わせや、推す私の動機を絡めた推し活サイクルを設計し、ブランドへの認知や行動喚起につなげることで、クライアントの要望に叶う推し活ソリューションを展開していきたいと考えています。
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