「実証された雑誌・デジタル・リアルでのメディア・コミュニティーの力、
集英社『MAQUIA』× 資生堂ジャパン~事例と効果検証」
<パネリスト>
平池 綾子 氏(資生堂ジャパン / メディア戦略部 メディアバイインググループ グループマネージャー)
古賀 路 氏(集英社 / 広告部部長代理)
中山 不尽子 氏(ビデオリサーチ / メディアコミュニケーション局課長)
<モデレータ>
佐藤 朋裕 氏(東洋経済新報社 / ビジネスプロモーション局部長)
佐藤氏:今回のタイアップの概要、企画の狙いについてご説明をお願いします。
古賀氏:2004年に美容専門誌として創刊した『MAQUIA』は、発行部数や『MAQUIA ONLINE』のユニークユーザー数、SNSフォロワー数などを合計したトータルリーチが約505万人(注:タイアップ実施時)となり、大きなファンコミュニティが形成されています。今回の資生堂ジャパン様との企画では、本誌純広とタイアップ、『MAQUIA ONLINE』への転載と動画制作を行いました。
平池氏:対象の商品はdプログラムのアレルバリアシリーズです。花粉の季節には、花粉症ではない人も花粉の付着による肌荒れを引き起こすことが研究によってわかっています。この新たな知見には、雑誌の編集力による紐解きが重要であると考えました。また、LINE登録によるサンプル配布など、理解促進とトライアルによる効果の実感を目的としたコミュニケーションプランを立案しました。
中山氏:今回の企画に関する「新M-VALUE」のプレ調査は、 (1)公募による閲読者の獲得 (2)DMP(Data Management Platform)連携によるデジタル上の行動分析 (3)自由回答の大量取得―が特徴です。今回、本誌と『MAQUIA ONLINE』の閲読者から約1,000サンプルを集め、調査対象である全コスメ誌のスコア平均と比較しました。その結果、広告接触ありの割合や、広告掲載の魅力度効果、商品・ブランドへの好感度、認知から購入意向に至った割合などが高スコアでした。自由回答からは、資生堂ブランドへの安心感と、『MAQUIA』ならではのナラティブ化された動画や編集力がしっかり刺さっていることが見て取れました。
佐藤氏:広告評価についてはどのように思われますか。
平池氏:購入・利用意向が8割を超え、特にサイト閲読者は、事前と広告提示後で10ポイント以上の底上げ効果があったことは、商品を理解し、興味を抱くというタイアップ実施の目的を果たしたと言えます。本誌の純広も評価が高く、あらためて純広のパワーを見直す契機にもなりました。「雑誌の力」とは、読者にとっての価値を見出し、読者が共感する表現に変換するという、インサイト発見力とコンテキスト力だと考えます。今回の結果は、「雑誌の力」と「『MAQUIA』への信頼によって作られた読者の情報を受け入れる素地」が相まって、より高い効果につながったと思います。
古賀氏:多くの項目で、サイトが本誌を上回ったことは意外でしたが、複合的な施策がそれぞれの役割を果たし、良い形で結果に結びついたと考えています。佐藤氏:『MAQUIA』のコミュニティや閲読者はどのような特徴がありましたか。
中山氏:『MAQUIA』コンテンツに接触している「MAQUIAコミュニティ」の本誌読者は、接触していない人と比べると、購買活動に積極的で、企業ブランドサイトへの接触が高いことから、専門性の高い情報を好む知的好奇心が高い傾向がうかがえます。『MAQUIA ONLINE』ユーザーの調査では、DAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社)が提供するDMPと連結しました。デジタル上の行動や属性分類の推計では、既婚で小さな子供を持つ割合が高い傾向となっているため、時間のないママ層に『MAQUIA ONLINE』が響いている様子がうかがえます。また、「MAQUIAコミュニティ」は、経済力が高く、美への意識が高いため、高価格帯商品の購入割合も高い人が多いことがわかりました。
佐藤氏:MAQUIAのコミュニティパワーという視点で一言お願いします。
平池氏:「美しくなることが人生を変える」とまで言い切れる『MAQUIA』のコンセプトが人を集め、コミュニティ形成に寄与していると感じています。『MAQUIA』のコンテンツには、知的好奇心が高く、情報を得て自分で判断ができる読者の欲望に応える力があると感じます。
佐藤氏:今後の雑誌メディアとそのコミュニティに期待することを教えてください。
平池氏:雑誌メディアには良質なコミュニティを作る力があり、本誌やオンラインはもちろん、SNSなどが支えています。今後は雑誌メディアの全体像把握のために、公式SNSを含めた雑誌パワーを見ていきたいですし、それが明らかになることがメディアの価値をさらに高めることになると期待しています。
中山氏:雑誌が持つコンテンツ力と編集力は人をつなぐ強さと高い信頼性があり、その価値は読者の言葉や行動で広がっています。SNSを含めたトータルリーチや、プランニングやマーケティングに資する評価価値をしっかり伝えるよう、これからも尽力していきます。
古賀氏:雑誌メディアに期待される役割が、量的リーチから、よりセグメントされた情報を届けるコミュニティ形成へと変化しているなかで、唯一無二のブランド力が今まで以上に重要視されていると感じています。そのためにも、読者やユーザーとしっかりとつながる仕組みを持ち、ユーザーの行動分析やインサイト分析を、定量、定性の両方で深めていくことが大切だと思います。
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