潜在顧客が動く「TikTok売れ」。その正体とは?
廣谷 亮 氏(TikTok For Business Japan / Brand Strategy Director)
2006年大手日系広告代理店入社後、営業としてキャリアをスタート。10年からバンコクを拠点に出向してからはStrategic Planning Directorとして様々なアカウントに従事。その後、外資代理店へ移籍後も海外を拠点にASEAN+インドをRegionの立場で統括。19年になりTikTok For Business JapanにBrand StrategyDirectorとして入社。営業と戦略の両方の視点に、最先端のテクノロジーを融合させたコミュニケーションを「現場発想」で提供します。
■TikTokって歌って踊るだけの場所?
「若者だけのものじゃないの?」といった質問をよく受けますが、TikTokは変わってきています。2019年は25歳以下のユーザーが45%ほどでしたが、今では約6割が25歳以上、ミレニアル世代(25~44歳)が急増し、主婦層も増えています。いまだに「若い子が歌って踊って口パクしている」というイメージが強いかもしれませんが、商品紹介・購入品紹介や、教養系・法律相談のような動画も出てきて、コンテンツの多様化が進んでいます。その結果、『日経TRENDY』・2021年ヒット商品ベスト30で「TikTok売れ」が総合1位となり、動画再生が「#購入品紹介」だけで22億回を超えるなど、どんどん膨れ上がっています。
■ おすすめ視聴
ニューノーマル時代となり、「世の中の情報を全てわかっているようで、実は一部しか知らない」と感じている人が70%以上いるという調査結果があります。「検索すれば情報は手に入るが、それは操作されたものなので、結局は一部しか得られない」という不満から、人々は新しい情報やコンテンツを求め始めました。そうなると、新しいものに出会える「おすすめ」視聴が価値を持ってくる。ユーザーは、自分のタイミングでシームレスに「おすすめ」される動画を選べ、興味がなければどんな動画もスキップできます。他社プラットフォームならフォローしているものが中心ですが、TikTokの「おすすめ」視聴ならいろいろ出てきます。それを音あり・全画面で、集中して見てもらえることが一番の特長です。
■ いま、好きなもの → 次に好きなもの
他社プラットフォームは「いま、好きなもの」を見るところですが、見たいものを見ている時に広告が遮ってきたら邪魔に感じます。しかし、TikTokユーザーは、新しい「次に好きなもの」を探しに来ているので、広告も新しい出会いとなり、広告や企業メッセージもコンテンツとして見てもらえる。その結果が「TikTok売れ」という現象で、いろんなパターンで起こっています。例えば3、4年前に売り出された本が、TikTokに上がった動画をきっかけとして、去年、一気に売れはじめました。本を見せながら綺麗な音楽をのせたシンプルな動画ですが、これを「エモい」と思ったユーザーがこぞって買ったためです。
■ ニューノーマルは潜在顧客を取り込むチャンス
ユーザーを顕在層、潜在層、無関心層に分類し、ブランドや商品・サービスを「好き」なのが顕在層、「好きでもきらいでもない」のが潜在層だとします。TikTokユーザー追跡調査によれば、あるブランドでは顕在層が約2割、潜在層が約7割でした。売上が顕在層から成立しているとして、潜在層を「好き」に変えることで顕在層を3割にすれば、単純計算で売上は1.5倍になります。TikTokのアプローチは潜在層を動かすこと、これまで難しかった潜在需要を刺激して、「次に欲しいもの」を顕在需要にすることです。
(事例紹介)KATE / リップモンスター
TikTokで火がついて200万本売れた花王の口紅です。独自エフェクトの動画を真似る投稿が続出し、ユーザーのブランド体験が進んで「いま、好きなもの」になりました。従来なら他社の動画サイトにも投稿し、そこにも広告を出稿して導線作りをしていたものが、この事例ではTikTokユーザーが他の動画サイトに流れ込み、ブランドの入口として新規顧客の大幅増にもつながりました。
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