リビング新聞創刊50周年の取り組み
サンケイリビング新聞社
編集部部長 藤田景子 氏
『リビング新聞』は、2021年に50周年を迎えました。まさにコロナ禍の中で始まりコロナ禍で終わった50周年でした。このような環境下において、「苦境に立つ地域のビジネスを応援したい」「読者には、リアルでは難しくなった体験機会を提供したい」という想いをベースに、50周年プロジェクトに取り組みました。
当社には、50年間をかけて地域に根付いた「紙メディア」が作り上げた「信頼感」、行動をプッシュできるWebベースの会員組織、キュレーションサイトなど外部に広く情報を送るベースとなるWebサイトがあります。その上で、現在のリビング新聞が提供する価値は、「紙」だけに留まらないことを強く伝えたいという想いとともに、私たちが継続的に評価されている「地域・読者との絆」をさらに強化していくという方針から、継続的な取組みはWebを軸に展開し、大切なポイントで「紙面」を使うこととしました。
実は当社は、20年に渡り、DXに地道に取り組んできた経験があります。業務の土台として(1)オリジナルのアンケート・応募フォーム生成システム、(2)会員DBと連携したメール配信システム、(3)ブログ制作システムという、システムの3点セットを構築してきました。当時はDXという言葉はありませんでしたが、この『リビング新聞』の「読者との接点を広げる」ための基盤のシステム構築があり、社員の多くが活用スキルを持つことで、現在、さらなるデジタル事業変革が進められています。
また、もうひとつ当社のオリジナリティを支えているのが、数多くのイベントやプロモーション、会員組織の運営などを行う中で蓄積した「事務局ノウハウ」です。事務局は読者との接点の最前線として高い対応力を持ちます。システムの3点セットで読者・ユーザーとの接点を設計し、「事務局ノウハウ」で的確に対応していく。編集や営業という職種を問わず、多くの社員が「地域に暮らす人=読者」との接点を、多様に設計できることが「リビング新聞の強み」であり、50周年プロジェクトの背景となりました。
リビング新聞 創刊50周年プロジェクト
1.創刊50周年記念号の発行、特設ページの開設
創刊記念号の紙面には特別感を出し、「ディスカバー地元」を巻頭テーマに、「地元人50人の声」として、地域の方に、街の魅力を語ってもらいました。読者からも多くの反響があり、あらためて地域の人の顔を出すことの重要性や、地域の読者に密度濃く配布するフリーペーパーの威力は健在であることを実感しました。
2.ドットリボン・キャンペーンの実施
地域にかかわるすべての人と共に、応援マインドをもった地元での購入・消費行動を継続的に高める活動を実施し、広告主でない企業・お店とも関係を構築しました。具体的には、地元の街に笑顔をというコンセプトに賛同した企業やお店、自治体などが「チーム・ドットリボン」に登録し、お得情報、地域のための取り組みなどを、リビング地域Webで紹介する企画です。
<掲載事例>
リビング新聞×COEDO「創刊50周年記念オリジナルセット」販売
埼玉にあるクラフトビールのコエドブルワリーさんと、ドットリボン・キャンペーンを機にご縁ができ、コロナ禍で中止になった祭りを支援するための「祭エール」を詰め合わせたオリジナルセットを、読者に販売して完売しました。今回は、首都圏・大阪が一体の50周年ということを活かして、埼玉の商品を、首都圏全体、また大阪・兵庫でも紹介しました。このように、紙面&Webのネットワークで「地域の情報」を全国へ広げる枠組みにも可能性を感じています。
3.紙面にとどまらないコミュニケーション拡大
ライブコマース「リビングパンマルシェ」
東阪編集部の合同企画として、編集部おすすめの地元のパン店に参加してもらい、紙面とWebで告知し、ライブで魅力を伝えながら、オリジナル商品セットの通販を行いました。編集部員とパン店のオーナーやスタッフのトークで、パン店の魅力とともに編集部の顔がみえる企画になりました。また、瞬発力勝負の「ライブコマース」ですが、アーカイブでの販売も好調でした。これは、やはりプッシュできる会員組織を持っているからこその「リビング」の強みを実感しました。
「買って試してモニター」
コロナ禍で店頭プロモーションやイベントプロモーションが難しいというメーカーの悩みに対して、メディアでの商品紹介とモニター募集を行いました。モニター希望の読者は店頭やECサイトで指定された商品を購入し、実際試したうえでアンケートに答えてもらい、完了後に謝礼をお支払いするというプロモーションです。メーカーは「試食やテスト使用の機会をもっと作りたい」、生活者側も「新商品を知ったり、試したりする機会が欲しい」という想いにズバリとはまった大ヒット企画となりました。これも、リビング新聞紙面の媒体力に加えて、事務局力や読者接点となるシステム、アンケート回収などの設計力、そして何よりリビングのファンである会員組織など、リビングの総合力があってこその企画だと思います。
フリーペーパーにおけるDXとは、読者との接点を増やし、さらにそれを新しいサービスや企画につなげるためにあると考えています。紙やWebという形にこだわるのではなく、さらに質の部分、「リビングがやる企画だったら、信用して参加してみよう」「リビングに書いてあるなら、やってみよう」など、信頼の価値を維持・拡大するために利用することが重要です。このように育まれた信頼感で、読者の行動を後押しし、読者には新しい体験機会を提供することができます。さらに、当社が提供するライフタイムバリューの高いお客さまとの出会いが、企業・広告主にもメリットをもたらしていく。これが、リビング新聞の存在価値であり、今後も新しい仕組みを取り入れながら、読者が行動したくなる経験機会を創出していきたいと思います。
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