2025年11月20日、朝日新聞出版『AERA』木村恵子氏、家の光協会『家の光』山本樹氏を迎え、「雑誌編集長との交流会」(日本アドバタイザーズ協会共催)を開催しました。講演では活発な質疑が交わされ、続く懇親会でも意見交換が深まり、出版社と広告主の交流が一層広がりました。
やさしくなりたい―AERA創刊史上、
もっとも“やさしい”プロジェクト始動

朝日新聞出版
AERA本部 本部長補佐
AERA編集統括・ブランドプロデューサー
木村 恵子 氏
『AERA』は1988年、「ライバルは朝日新聞」というキャッチコピーのもとに創刊しました。男女雇用機会均等法の施行の少し後に創刊されたこともあり、特に働く女性やその課題について熱心に取り上げてきました。読者は主に30~50代の働く男女で、知的好奇心が高く、社会問題への関心が強いことが特徴です。
『AERA』を一言で表すなら「社会課題解決メディア」です。私たちは世の中の見えにくい社会課題に名前を付け、鋭いキャッチコピーでそれを可視化し、世の中に問いかけてきました。例えば『カスタマーハラスメントの理不尽』という特集は、「カスハラ」という言葉がまだ浸透していない時期に掲載したものです。現在はデジタル発信を強化しており、月間約5000万PVを誇ります。
さらに、2025年度からは記事発信にとどまらず、イベントや読者コミュニティなど、立体的な取り組みを加速させています。代表的なものが読者イベント「アエラボ」。新しい価値観を生み出す実験場“ラボラトリー”として年1回開催、約500名の方に参加いただいています。また、アエラボから派生した、働く女性の課題について語り合う少人数の読者コミュニティ「アエラボカフェby AERA Woman」も毎月開催しています。こちらも関心が高まってきており、テーマによっては100人以上の応募者があります。他にも、様々な企業が1つのテーマで話し合うラウンドテーブルや、女性管理職に仕事での苦労や達成感などを語っていただく動画プロジェクトなども展開しています。
こうした活動の中核として、25年度から新たに始動したのが「やさしくなりたいプロジェクト」です。背景には、SNSでの誹謗中傷などに象徴される「社会の行き過ぎたギスギス感」があります。メディアとしても、デジタル化が進む中で情報が個々の興味に偏りやすくなるという課題を感じていました。こうした状況の中で、私たちは多様な価値観やニュースを知ってもらうことがやさしさの第一歩であると考え、「やさしくなりたいプロジェクト」を立ち上げました。
このプロジェクトは10年前に起源があります。脚本家の小山薫堂氏を特別編集長に迎え、丸ごと1冊「やさしくなりたい。」をテーマに特集号を発行しました。今回も小山さんをプロジェクトのスペシャルオーガナイザーに迎え、25年10月には特設サイト「やさしくなりたい by AERA」を開設し、多様な価値観やニュースに触れられる様々なカテゴリのコンテンツを発信しています。12月には、プロジェクトのシンボル号「やさしくなりたい号」を刊行、今後も、ジェンダー、Well-Being、地方創生、震災復興などをテーマに特集号を刊行予定です。
さらに、プロジェクトに関連するイベントも実施していきます。26年2月には東京ミッドタウンで読者500人以上が参加する「アエラボ2026」を開催予定。「アエラボカフェ」では「やさしいコミュニケーション」をテーマにしたイベントや、全国100校以上の高校と連携する「AERAサポーター高校」プロジェクトも進行中です。SNSでは「やさしさみつけた!キャンペーン」を展開し、11月13日の「ワールド・カインドネス・デー」に合わせて発信を強化しました。このように、10年前は紙の雑誌だけだった取り組みが、多角的・立体的に広がっています。
また、企業とのタイアップ企画も進行中です。このタイアップ企画も立体的なこれまでにはない取り組みとなっています。たとえばある企画では、総合出版社という強みを生かし、吉田修一さん、朝井リョウさん、俵万智さんといった著名な3名の作家がクライアント様のコーポレートメッセージをテーマに短編小説を執筆し掲載しました。コーポレートメッセージに込めた思いを作品として広く浸透させることができました。また、別の企画では、前述した「アエラボカフェ」をクライアント様の啓発したいテーマで開催。参加者がリアルな場で深いディスカッションをしてテーマを本質的に理解するという満足度の高い取り組みにつながりました。ほかにも、「AERAサポーター高校」のコミュニティを生かして特に次世代にメッセージを伝える企画や、クライアント様と一緒に「GREEN✕EXPO」という大きなイベントに他の企業様も巻き込みながら取り組んでいくという企画、震災復興という非常に大事なテーマを「やさしさ」という切り口を通して見せていく企画など、多種多様な企画が進行中です。こうした取り組みを通じて、企業がもつ「やさしさ」や新しい価値に気づいてもらい、企業のファンになっていただくことを目指しています。
知ることからやさしさが広まり、ポジティブなアクションが生まれ、人と人がつながる。「やさしくなりたいプロジェクト」を通じて「やさしいムーブメント」が起き、日常や社会が変わる流れが生まれつつあることを実感しています。現在進行形のこのムーブメントをより一層加速させていきます。
お名前記入欄のある“謎”雑誌。
『家の光』を入口にJAの扉をノックする
家の光協会
編集・制作本部 本部長
山本 樹 氏
『家の光』は、大正14年、「協同の心を家庭において培う」という考えのもと創刊され、本年で100周年を迎えた家庭雑誌です。コンセプトは「食と農」「暮らし」「協同」「家族」。本誌の主な読者層はJA(農業協同組合)の女性組織のメンバーや役職員で、地方に住む食や農に関わりのある方々の暮らしに役立つ情報を提供しています。
JAでは協同組合として、農産物の出荷・販売だけでなく、金融・共済など、地域に密着した総合事業を展開しています。JAという組織は組合員との直接的なコミュニケーションを大切にしており、『家の光』はJA職員が手渡しで届けている定期購読誌です。販売部数は約33万部、月刊誌としては2番目の規模を誇ります(2024年下期ABCレポート)。購読者は全国にくまなくいて、75%が3年以上、50%が10年以上購読しており、なかには50年以上の愛読者もいます。
中心読者であるJA女性組織のメンバーは、全国に約37万人。主に50~70代で、専業農家から非農家の方まで幅広く、様々なグループ活動を通じて地域の役に立ちたいと願い活動されています。彼女たちの間では、『家の光』を持ち寄って料理や健康体操などを学び合う「持ち寄り読書活動」が盛んに行われています。この活動の中で雑誌がだれのものかわからなくなることもあるため、『家の光』では雑誌の裏表紙に「お名前記入欄」を設けています。こうした活動から多くの地域貢献活動、ボランティア活動などが生まれ、JA女性組織のメンバーは口コミ力と波及力に優れた、パワーあふれるシニア層として注目されています。
一般的に雑誌は読者が“自分のため”に読むものですが、『家の光』は“誰かのため”に読まれている、活用されている雑誌ともいえます。例えば、手芸記事は「仲間で集まって作る」をコンセプトにしており、簡単に短時間で完成し、不用品を活用できる作品が特に人気です。作品はみずからの暮らしで活用するだけでなく、福祉施設やJA支店などに寄贈され、地域社会への貢献にも役立っています。料理記事は家族の食事作りや子どもたちの食育に活用され、地産地消を取り入れた料理の伝承にもつながっています。
読者からの情報提供をもとに、2023年4月号に掲載した「新聞折込チラシで作る肩たたき棒」は、全国で話題を呼び、みんなで作ってJAのイベントや福祉施設などでプレゼントされました。また、「布ぞうり」は約20年前の記事をきっかけに全国へ広がり、農産物直売所や道の駅で販売されるまでになりました。創刊100周年記念企画では、布ぞうりを作って保育園に寄贈する活動を続けている93歳の読者を紹介しました。総じて、『家の光』読者はSDGsやエコ、防災など「地域社会をよくしていく」ことへの関心が高く、手芸記事を通じて販売したみつろうラップの作成キットは約3,000件、防災ブレスレットの作成キットは4万件以上の発注があり、その売上の一部は被災地への義援金として寄付もされました。
当協会では、こうした活動を支えるため、JA女性組織との連携を一層強化しており、各都道府県に担当者を配置して、『家の光』記事を活用した地域活動やイベントの開催などのサポートを実施しています。『家の光』では、JA女性組織との連動企画に加え、Webマガジン「あたらしい日日」と連動したタイアップ広告、JAイベントでのサンプリングやブース出展、500名の読者モニターを活用した商品開発に関するヒアリングなど、多様なプロモーションが可能です。今後も、JAと地域を舞台に元気なシニア女性たちと一緒に様々な取り組みを進めてまいります。
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