フォーカスABCメディア『経済の伝書鳩』の取材記事をアップロードしました

経済の伝書鳩媒体ロゴ
毎日飛び立つ北の伝書鳩
 昨年、平昌オリンピックで銅メダルを獲得した、女子カーリングチーム『ロコ・ソラーレ』の地元として一躍有名になった、北海道オホーツク海側の中核都市・北見市。その北見市に、日刊のフリーペーパー『経済の伝書鳩』があります。一体どうやって無料の情報紙を毎日発行、配達をしているのでしょうか?同紙を発行している、株式会社伝書鳩・代表取締役社長の藤澤達夫氏に、そのユニークな媒体、経営方法についてお話を伺いました。

(インタビュー:2019年2月25日収録)


カーリング女子の「そだねー」が流行語大賞に選ばれて話題になりましたね。

 北見市常呂町を拠点にするカーリングチーム『ロコ・ソラーレ』のことは、有名になる前から取材を続けています。選手の家族のことも交えて、エピソード的な記事も書いて応援してきました。銅メダルを取った頃、藤澤五月選手の自宅と間違えられて「おめでとうございます!」という電話がよく掛かってきました(笑)。北見の知名度が上がり、何より町が元気になり、本当に嬉しかったです。



本題に入りまして、『経済の伝書鳩』の歴史、創刊の経緯を教えてください。

 私の父親で創業者の藤澤和光(かずみつ)は、正面語り不動産業を営んでいました。バブル経済の頃は、建売物件を多く扱っていて、新聞広告や折込にもたくさん出稿していましたが、住宅の内覧会にもっと多くのお客さんを呼び込めないだろうかと考え、思いついたのが北見市内の所定全戸にチラシをポスティングすることでした。社員がチラシをポスティングしてみると、内覧客は増えました。


 ただ、せっかく全戸配布をしても、読まれずに捨てられていることもわかりました。捨てられずに見てもらうには、どうしたら良いか? そこで「お客さんが関心をもつ情報、特に日刊の新聞にも載っていない地元北見市の情報が載った情報紙を作って、それにチラシを折込めば手に取ってもらえるのでは」とひらめきました。こうして、1983(昭和58)年に『経済の伝書鳩』が誕生しました。



『経済の伝書鳩』の名前の由来は?

 実は、先代から直接題字の説明を聞いたことがなく、私なりの解釈ですが、紙面を通して地域経済を活性化させたいという思いから名付けたようです。例えば、イベント情報を載せれば経済行為につながる。変わった花が咲いた、きれいなイルミネーションが始まったという記事でも、興味を持って足を運ぶ人がいて、行き帰りが車ならガソリンを消費する、途中で食事や買い物もする。まさに “伝書鳩が情報を届けて” “人が動く”  “お金が動く” といった情報発信と消費経済の関わりを表したようです。



日刊化は、創刊時からの構想だったのでしょうか?

 親会社が不動産業の他に、配置薬を販売していた縁で、薬草を使った古くから伝わる民間療法をまとめた本の転載許可をもらい、『おばあちゃんの知恵袋』としてシリーズ化したところ、好評を得ました。また、今も続いている『私は言いたい』というコーナーは、読者からの投稿なのですが、過激な内容のものも校正しないで、社名や人名をそのまま載せていたので、火消しに苦労をしたこともありました。一方で、「地元の人の声を前面に出してくれた」とお褒めの声を頂き『伝書鳩』の認知、そして評価を高めることにもなりました。


 こうした情報紙に載っている広告だからでしょう、不動産広告、知人の会社の求人広告を皮切りに、徐々に実績を作っていき、口コミで広告主を増やしていきました。広告の9割が電話注文だった時代もありました。先代は「広告はスピードが重要で、今日もらったものは、すぐ明日にも載せる」と常々言っており、週刊から、週2回、3回、4回と順調に発行回数を増やしていき、創刊5年目の87年、今の6回となりました。先代は「伝えるべき記事や広告は毎日あるから、日曜日も発行する」とまで言っていましたが、さすがにそれは全社員で止めました(笑)。



伝書鳩の編集方針、特徴をお聞かせください。

 読者モニターに話を聞くと「記事があちらこちらに飛んでいて紙面が見づらい」という声が必ず出ます。当紙は、広告を見てもらうために記事を載せているので、記事の合間に広告があれば、仮に関心はなくても、社名ぐらいはチラ見でも覚えてもらえると思います。また、読者は読みにくくても面白い、興味がある記事なら読み切ってくれると考え、読みやすさを敢えて犠牲にしています(笑)。


伝書鳩_社屋 先ほど、当紙は編集の素人が始めたと言いましたが、不動産業は良い物件がないか常に情報収集に努めています。取引はBtoBよりBtoCが多いので、地域の人と密にコミュニケーションを取っています。こうしたノウハウを活かし、次第に読者から情報が寄せられるようになりました。読者から寄せられる小ネタは、日刊新聞には絶対に載らないような情報なのですが、当紙はそうした情報も載せるので、提供した読者は喜んでくれて、ますます情報が集まるといった好循環が生まれました。地域情報以外にも、有料配信社からのテレビ欄や、トピックスには通信社からの全国、国際ニュースも載せています。いずれも広告を見てもらう、読んでもらうための紙面作りの仕掛けです。



紙面を見るとお悔やみ広告に目が行きますね。

 最初の頃、誰もが、お悔やみ広告は新聞に掲載するのが常識だと考えていたため、一番に情報が入る葬儀会社も、当紙へ広告掲載を手配することに消極的でした。喪中宅に直接営業しても、断られるばかり。悩んでいたときに、これまでの体裁にとらわれない、遺影写真つき広告を思いつきました。たまたま知人宅でお悔やみがあって、広告掲載を頼み込み、そこで初めて顔写真を載せたところ大変好評でした。やはり、写真があると分かりやすいこともあり、葬儀会社から多くの注文が入るようになりました。今ではお悔やみ広告が定番になっています。



本紙広告、折込はどう変わってきていますか?

 不動産、求人広告から始まったこともあり、以前は、本紙広告が圧倒的に多かったです。最近の紙面は8~12ページ建てですが、最大で28ページに達したこともありました。広告も、折込も、創業から2~3年でグーンと増えました。ご多分に漏れず、北見でも、地元資本のスーパーや個人商店が姿を消し、大手資本による全国チェーン店なども増えてきた結果、広告会社経由での広告や折込の割合が増えています。


 当紙を午後、夕方前に配るのは、配達員の主婦が働きやすい時間帯であるとともに、家計を握っている主婦に一番見てもらえる時間帯だからです。夕食の準備前にサッと見てもらい、例えば、お父さんが新しいゴルフクラブを欲しがっていることを知っていたお母さんが、夕食の家族団らんの時に「ゴルフ用品の安売りのチラシが入っていたよ、そこで買えば」と薦めるシーンが思い浮かびます。近年、ネット通販が盛んになっていますが、地域経済を支えるためにも、消費者の皆さんには地元にあるものは地元店舗で買い物をして欲しいですね。



日刊となると、配達は大変でしょう。

 創刊当初、配達員がいない区域を社員総出で夜遅くまで配るなど苦労しました。その後、当紙の認知度が高まるにつれて、配達員の数も増え、定着・安定していきました。配達エリアは旧北見市と美幌町、津別町でしたが、合併で北見市になった端野町、留辺蘂町、常呂町の他、網走市、置戸町、訓子府町、大空町の2市5町にまで広がり、部数もABC協会に入った89年には4万7千部だったのが、今では8万2千部までになりました。


 配達は日曜日以外の毎日、猛暑や極寒、大雪でも仕事がありますから、配達員の皆さんには頭が下がります。冬場はすべってケガをする方が増え、完治したらまた配布を続けたいという方も多く、その間、空いた区域はもちろん社員が配達するのでこれまた大変です。配達区域は2時間20分ぐらいで配れるように区切っていて、午後2時半頃から配り始め、お悔やみ広告の関係で遅くても6時頃に終えるようにしています。


 また、20年前は配達が遅れたり届かなかったりすると、読者から「お金を払ってないのに申し訳ありませんが、まだ新聞が届きません」と恐縮しながらの電話だったのが、今は「会社休みなのか!」と強い口調の電話が来ます。当紙が毎日届くのが当たり前で、生活の一部になっているのは大変嬉しいことです。



人手不足と全国的に言われていますが?

 昔に比べ、配達員の募集には苦労しています。今まで配達員のほとんどが主婦層でしたが、女性が働ける場所が増えたこともあり、主婦に加えて、定年退職者などの男性も増えています。配達エリアで当紙を知らない人はいないので、配達をすると健康に良いともっとアピールしたいです。事実、糖尿病で医者に見放されそうになった人が毎日配達し、約9ヶ月でほとんど改善。問題ない数値になったと喜んでくれて、その人は今も配達を続けています。



将来の計画、展望についてお聞かせください。

媒体 紙媒体の将来を予測できる人は、誰もいないと思います。当紙はネットには載っていない地元情報が満載の無料配布のフリーペーパーなので、掲載記事や広告に関心を示す限り、届けて「いらない」という人はいないはずです。ただ、将来に向けては、今のビジネスモデルを守りながらも、さらに広がりのある事業が必要になると考えています。


 当社では、“オホーツクのYahoo!”を目指して、ポータルサイト『オホーツク特選街』を立ち上げましたが、スタートが早かったのと、地元商店の皆さんが、まだITをよく知らないこともあって、まだまだ予定した実績まで上がっていません。いずれにせよ、これらは若い人たちの新しい発想で展開していくものだと期待しています。“地域に羽ばたく情報屋”として、市民や企業の役に立つには何が出来るかを考え続けています。

広告主、広告会社にアピールしたいことは?

 広告主には当紙の全戸配布はもちろん、地元に密着している強み、特徴を知って頂きたいです。今後も一層強みを強化してアピールをしていくつもりです。



最後に、ABC協会に入ってよかったこと、要望はございますか?

 フリーペーパーはかつて、ちゃんと配っているのか?捨てられているのでは? など広告主から懐疑的に思われていた時代がありました。ABC協会に入会して部数公査を受けたことで、ABCに認証された部数だと胸を張って営業ができるようになりましたし、ABCが部数を認証、発表することでフリーペーパーの地位も向上しました。ABCには、会員の広告主や広告会社はもちろん、広告に携わる多くの人にフリーペーパーの強みを一層PRして欲しいです。

(聞き手:水林健一)



紙面
媒体概要■経済の伝書鳩/株式会社 伝書鳩発行/1983年創刊/ダブロイド版/8~12ページ建て/月曜~土曜日発行/北見市、網走市、美幌・津別・大空・訓子府・置戸町、2市5町の全世帯89%の企業、家庭にポスティング。