会報『JABC』2009/1・2

新年のごあいさつ

日本ABC協会  会長 成田 豊

あけましておめでとうございます。
昨年は、サブプライム問題に端を発した金融危機、その後の景気低迷の影響を受けて、会員数は700社の大台を割り込む厳しい年になりました。
公益法人制度改革による公益認定が12月から始まりました。当協会では会員の皆さまへのサービスの向上を図り、公益社団法人を目指す準備を進めております。
おかげさまで、この1年間も、雑誌、フリーペーパーの参加が続きました。特に雑誌につきましては、開発委員会からの参加要請に応えるかたちで、13誌の参 加が決まりました。このことは、雑誌発行社に部数の透明化を促進させよう、という意識が浸透した結果でもあります。また、08年上期からは、デジタル雑誌の部数が加算されたレポートになりました。
ウェブサイトによるデータサービス『JABC-DB』もサービス開始以来、アクセス数も順調に増えて定着してまいりましたが、今春からは検索機能も加わります。
このように、順調に進行している業務がある一方、ここ数年来叫ばれている、若年層のマス・メディア離れを始めとする、メディア環境の変化で、ABCの根幹 と言える公査業務は、日々難しさを増しております。今後も、会員の皆さまが安心してご利用いただけるデータを提供できるよう、今まで以上に、公査の精度を 高める努力をいたす所存です。
今年1年も、景気低迷の悪影響が心配されますが、基本に立ち返り「焦らず、気負わず、怠らず」の精神で、会員の皆さまにとってお役に立つABCを目指します。
本年もいっそうのご指導、ご支援をたまわりますようお願い申しあげます。

雑誌参加拡大アプローチの成果

-第108回開発委員会-

第108回開発委員会は、11月28日、協会会議室で開催、委員8人が出席した。
2006年から開始された開発委員会主導による雑誌参加拡大へのアプローチについてふりかえり、08年の成果として10社13誌の参加が評価された。
また、研究中のウェブ公査について事務局が報告し、委員から「印刷版にウェブ版の数をプラスした広告の売り込みが雑誌社から出始めた」などの発言があった。

新聞部数レポート規定の改正を承認

-第183回理事会-

第183回理事会は12月18日、プレスセンターAホールで開催、理事35人、監事2人が出席した。
議事録署名人2人を選任後、会員の入会承認について諮り、2社の入会が決定した。また、ウェブによるデータベース検索サービスの、4月開始に向けた新聞部数レポート規定の一部改正等について審議し、原案通り承認した。

米国BPA幹部、事務局を訪問

11月11日、米国専門紙誌公査機構(BPA)の副代表・ラッセル・ヘデラー氏とアジア太平洋地区担当部長・ドリーン・チャン氏が事務局を訪問し、双方の現況 報告および意見交換を行った。両氏は「アジア太平洋デジタル雑誌国際会議」に出席のため来日したもの。BPAからは、米国の主要広告団体との共同活動や、中東地域における公査媒体増加への取り組みなどが紹介された。

「メディア・マス広告変動の時代におけるブランド戦略」

株式会社 大広 マーケティング・コミュニケーション・ラボ 所長
関西学院大学 大学院 経営戦略研究科 教授
梅本 春夫氏

マス離れが起こっている

NHKの国民生活時間調査でマス4媒体への接触の推移を見ると、この20年間で接触率は低下しているが接触者の接触時間は逆に増えている。一見すると「マ ス離れは起きていない」と言えそうだが、同調査から30歳代男女を抽出すると、接触率・接触時間ともに減少傾向にあり、「マス離れが起きている」。

また、ビデオリサーチのMCR(メディア環境調査)で2000年以降の推移を見ると、マス4媒体への接触率は下降しているが、接触時間に増加傾向は認められない。
これらのデータからマスメディアへの接触率低下と接触時間の停滞傾向が窺える。このことは“見る層”と“見ない層”への二極化ではなく、全般的な低下を示している。

日本のコマーシャルは消費者に向かっていない

最近のADCONレポートで、『日本のCMは消費者に向かっていない』(小田桐昭)というセンセーショナルな論文が発表された。

そこでは「日本のコマーシャルは流通に向かっている」と指摘する。GRP(CM契約単位、視聴率×本数)とタレント起用を重視して認知度を追求するため、表現がワンパターン化している。その目的は店頭配荷の獲得を主眼としているためであり、そこに消費者に対する訴求姿勢はないと論じている。

また、認知度という効果指標しかないコマーシャルは、担当者が社内実績をアピールするために制作される側面があり、「“身内”に向かっている」とも指摘する。

つまり「日本の広告は消費者を置き去りにしている」。このため広告は“量”から“質”への転換が必要であり、日本の広告システムを再考しなければならないとの提言がなされている。

情報量の急増、メディア環境変化への対応

情報流通センサス(総務省)によると、2000年以降、選択可能情報量は幾何級数的に増大したため、そのうち消費情報量が占める比率は急激に低下して、現在では0.02%ほどである。情報が届き難くなるなかで最低限の情報発信を追求するため、広告が安易な表現やGRP偏重に傾くと考えられる。

一方、日本アドバタイザーズ協会で、企業がメディア環境の変化にともない具体的に重視する点を調査した結果、メディア対策/販促対策の観点による回答とともに、「質的な指標も意識」「新しい表現手法を創造」「広報との境目がなくなる」等のメッセージ対策の観点による回答も多い。企業が、情報量が増大する現在のメディア状況に何らかの対応が必要と、意識・模索していることも事実である。

ブランドとは

過去において、マーケティング活動におけるブランドの役割は極めて小さいと認識されていたが、1990年にアーカー(David A. Aaker)がブランド・エクイティ(資産)研究を発表して以降、その役割は大きく変化した。

1-2_brandケラー(Kevin Lane Keller)の研究(”Customer-based Brand Equity” 1993)を基に、90年以降のブランド解釈を説くと、「マーケティング活動が経済的成果に結実するために消費者の反応を経るが、その消費者の反応に作用 するのがブランド知識である」となる。そこで操作可能性の高さ故にブランド知識が注目される。ブランド知識を与えるコミュニケーションにおいて企業はメ ディアを活用する。このように企業が消費者の反応に影響を与えて経済的成果を獲得しようとする構図において、マーケティング活動におけるブランド要素は重 要な概念と認識されだした。

また、ブランドは究極の競争次元とも言われ、市場成熟による競争の変化にブランドの有効性が指摘されている。従来の競争は相手が見える相対競争であったが、新しい競争では、自らの絶対的価値が問われる絶対競争である。これまで シェア争奪を目指していた市場が飽和状態になると、いかに顧客を満足させるかが競争の目的となる。つまり、市場シェアを争う“戦争”から、顧客満足を競う “恋愛”競争となった。相対的優位性から絶対的価値へと争点は転換しており、その絶対的価値とつながっているのがブランドである。今までのように4P(製 品・Product、価格・Price、流通・Place、プロモーション・Promotion)のパーツを個別に競うのではなく、顧客との間に好意と絶 対的評価を獲得するエンゲージメント・強力な関係を築くことが現代の競争命題となった。

カップフェレ (J. N. Kapferer)は、「ブランドは市場をセグメントする」としている。想定する消費者に確実に好かれることが肝要で、「長期的かつ永続的な差別化によって構築される」としている。ブランドは過去からの継続によって構築されたものであり、「製品に意味と方向を与える」、つまり将来を約束する消費者との「契 約である」としている。

ブランド・コミュニケーションの方向性

製品・価格・流通の変化を周知させて販売促進を狙うには、短期集中型のキャンペーン広告が有効である。だが、その単発的・散発的展開は、ブランド広告にはならない。

ブランドの広告、ブランド・コミュニケーションとは「言い続けてゆくこと」、その特性と消費者との約束を言い続けてゆくことがブランド広告となる。

ブランド・コミュニケーションとは、情報資産化したブランドを投資家・消費者・従業員等のステークホルダー(利害関係者)に対して統合的に提示していくこ とである。情報資産化とは、ブランド・アイデンティティをまとめることで、コミュニケーションを適正にする。ブランド・コミュニケーションは、期待感の蓄 積によって好意を形成し、投資家には投資意欲を、消費者には購買意欲を、そして従業員には向上意欲を喚起する。その成果は商品・サービスの提案に対する反 応となって現れ、販売効果を高める基礎となる。

クロスメディア・コミュニケーションによるブランド知識構造化

1-2_crossmediaブランド知識は商品の属性評価となってブランド選択を促す。ブランド知識を与えるものとして、メディア接触を挙げることができるが、メディア接触がブランド知識に与える影響力では、メディア情報の質的考察が不可欠である。

一つのメディアでは伝えきれない様々な情報を、オーディエンスが適宜に選択・取得・融合して自らの知識を形成する。そこにクロスメディアの必然性がある。

問題認識の発生とそれに対処する内部情報が不足した時、消費者は情報処理を活性化させる。外部情報の取得にはその即時性と信頼性、すなわち情報の鮮度と品 質が問題となるが、背景として情報過負荷・情報量の過剰があるため、消費者はとまどいを感じる。こうした場合、モーメンタム(惰性)が発生し、消費者はア ドホック(場当たり的)に安易な外的判断基準を求める。一番廉価なもの、最も標準的なものといった浅い情報処理で完結し、即時性と鮮度のみを追求してイン ターネットに情報を求める傾向が顕著となる。モーメンタムの発生は、商品のコモディティ化(一般化)を引き起こしてしまう。

このモーメンタムを回避する有効な手段が知識構造化によるブランド理解である。ブランドの知識構造化にはソサイアタル性と共感が必要となる。ソサイアタル 性とは社会的意義や理想的な在り方の判断、共感とは自らの考えとの共通性の判断、こうした情報処理が知識構造化であり、ここで深い情報処理が行われること になる。この知識構造化のための情報には、その信頼性と品質が追求される。このためターゲット特性に応じたメディア選択、適切な情報発信源の選択が、企業 にとって極めて重要となる。

メディアに求められること

メディアには、“鮮度”のみならず“品質”が問われる時代が既に到来している。メディアがしなければいけないこと、それはメディアのブランド化である。

選択可能情報量に対する消費情報量をメディアごとに分析すると、インターネットの0.007%に対して雑誌33%、新聞2.5%と依然として印刷メディアの高い影響力が窺える。オーディエンスの接触が低下・減少するなかで、如何なる情報にその力を傾注するかが問われる時代がメディアにもやってきたのだ。

現在の競争はシェアを争う“戦争”ではなく、顧客満足を競う“恋愛”である。どんな情報を発信できるのか、オーディエンスの期待と満足を得られる情報なのかが大事になってきている。また、情報品質を追求するとともに高い評価を得る必要がある。社会的自己判断のための根拠を求めるオーディエンスは、メディア に社会性と共感性を求めている。従ってメディアは、社会的意義がある存在でなければならない。これがメディアのブランド化である。

メディアのブランド化は、メディア自らの得意領域への確かな情報発信が必要となる。これまで継続して培ってきた品質を高めていくことでブランドは築かれる。そして将来にわたる正確性・便益性を約束することがメディアに求められる。
消費者は商品やサービスの一局面しか見ておらず、しかし、消費者が感じ取るそれだけでブランドはできてしまう。メディアに対しても同様であり、ブランドは自らが積極的にデザインしていかねばブランドたりえず、情報品質と情報価値向上の努力が求められている。

東京フォーラム開催のお知らせ

今年も下記のとおり「2009ABC東京フォーラム」を開催します。詳細につきましては、2月上旬に会員の皆さまにご案内いたします。

日 時 2009年3月5日(木)
開場:13時
業務報告:13時20分~13時30分
講演:13時30分~15時
会 場 日本プレスセンター・10階ホール(千代田区内幸町2-2-1)
講 師: 経済評論家・公認会計士 勝間 和代 氏
演 題: 売る立場としての『読書進化論』

JABC-DB検索機能をご活用下さい
4月から、JABC-DBに新聞・雑誌販売部数の時系列や新聞の普及率を検索できる『データベース検索』機能が加わります。同サービスは特別会費でご利用いただくため、お申し込みが必要となります。なお、IDをご登録いただいている方には、試用体験のご案内メールを1月中に配信予定です。
岐阜、三重の販売店別部数、公開開始
12月下旬に発行した「販売店別・西日本版」(2008年10月)に岐阜県、三重県が新たに加わりました。これで公開地区は21都道府県となります。今回をもって、公開エリアの拡大は一時終了します。

公開地区一覧

1-2_gifu-mie_3『東日本版』4月部数(6月発行)
北海道、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉
東京、神奈川、山梨、長野、静岡

『西日本版』10月部数(12月発行)
岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪
兵庫、奈良、和歌山、福岡

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